血栓編

カイプロリス

作成日:2021年2月

はじめに

カイプロリス(一般名:カルフィルゾミブ)は、不可逆的かつ選択的な第2世代のプロテアソーム阻害剤です。

再発・難治性多発性骨髄腫を対象とした第Ⅲ相試験(ASPIRE試験、ENDEAVOR試験、A.R.R.O.W.試験、CANDOR試験:詳細は臨床試験の概要参照)において、対照群と比較して、無増悪生存期間の延長が示されました。その一方で、心血管関連の副作用が報告されています。これらの副作用の発現は、致死的イベントとなる可能性とともに、治療の中断や中止などにより原疾患の増悪にもつながりかねません。治療を継続し、病勢をコントロールするためにも、適切に副作用をマネジメントすることが重要となります。

「CVAEアトラス」血栓性微小血管症、静脈血栓塞栓症編では、カイプロリス投与による血栓性微小血管症(TMA)、静脈血栓塞栓症(VTE)の発現状況や転帰とともに、カイプロリス投与前のアセスメント項目と介入方法、カイプロリス投与中のアセスメント項目とTMAやVTEの診断と治療について概説しています。

多発性骨髄腫は、様々な新規治療薬の登場により予後が改善しつつあり、QOLの維持、生命予後の観点からも、副作用管理は以前にも増して重要となっています。本冊子が、カイプロリスによるTMAやVTEのマネジメント、さらにはより良い多発性骨髄腫治療につながれば幸いです。

飯田 真介 先生
名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 教授

Cardiovascular related Adverse Event

Contents

  1. 血栓性微小血管症(TMA)
    1. 病態
      1. TMAとは
      2. TMAの分類
    2. 発現状況、転帰
      1. 発現状況
      2. 転帰
    3. 参考:カイプロリスによる発現機序
    4. カイプロリス投与前アセスメント
      1. リスク因子
    5. カイプロリス投与中アセスメント
      1. 投与中アセスメント項目
      2. カイプロリスの休薬、減量、中止基準
      3. TMAの診断と治療
  2. 静脈血栓塞栓症(VTE)
    1. 病態
      1. VTEとは
    2. 発現状況、転帰
      1. 発現状況
      2. 参考:カイプロリスによる発現機序
    3. カイプロリス投与前アセスメント
      1. リスク因子
      2. 投与前アセスメント項目
      3. アセスメント後の介入
    4. カイプロリス投与中アセスメント
      1. 投与中アセスメント項目
      2. カイプロリスの休薬、減量、中止基準
      3. VTEの診断と治療
  3. 参考資料
監修
飯田 真介 先生
名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 教授
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